作業環境測定の義務とは?対象作業場と指定作業場
著者・監修: 依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
作業環境測定の義務とは?対象作業場と指定作業場
作業環境測定は、労働安全衛生法施行令で定める作業場に必要となり、指定作業場では作業環境測定士等による実施が求められます。まず、対象となる作業場と実施者の要件を分けて見ます。
「測定が必要な作業場」と「測定を誰が行うか」は、別の条文で確認します。屋内作業場であることだけでは判断せず、対象となる業務、省令上の細目、指定作業場かどうかを順に見ます。
作業環境測定が必要になる作業場
労働安全衛生法第65条第1項は、政令で定める作業場を有する事業者に、必要な作業環境測定と結果の記録を求めています。同条は現行(最終改正: 2025-05-14、確認日: 2026-09-05)であり、2026-10-01施行の改正法でも第65条自体の内容は変更されません(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) 第65条、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号) 第21条)。
労働安全衛生法施行令第21条の体系

労働安全衛生法施行令第21条は、粉じん、暑熱・寒冷・多湿、著しい騒音、坑内、中央管理方式の空気調和設備を設けた事務室、放射線、特定化学物質・石綿等、鉛、酸素欠乏危険場所、有機溶剤に関する作業場を定めています。これは10の号による体系であり、測定の対象を単に「工場」や「屋内」とまとめるものではありません(労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号) 第21条第1号〜第10号/現行(最終改正: 2026-06-17)/確認日: 2026-09-05)。
測定は、厚生労働大臣が定める作業環境測定基準に従って行い、結果を記録します。作業環境測定の義務と、個別の測定周期、評価、保存年限は別の規定で決まるため、対象となる物質や工程を特別則まで確認する必要があります(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) 第65条第1項・第2項/確認日: 2026-09-05)。
社内で確認表を作るときは、法令名だけを並べず、工程と場所を一組で記録します。たとえば同じ物質を扱っていても、屋内の取扱い場所、設備の状態、作業方法が異なれば、確認すべき規定も変わり得ます。測定の結果を受け取った日と、次回に見直す契機もあわせて残すと、担当交代時に確認の起点を共有できます。
| 区分 | 施行令第21条で定める主な作業場 | 先に確認すること |
|---|---|---|
| 化学物質・粉じん | 粉じん、特定化学物質・石綿等、鉛、有機溶剤 | 対象物質、作業内容、特別則の細目 |
| 物理的因子 | 暑熱・寒冷・多湿、著しい騒音、放射線 | 作業場の状態、測定周期、保存対象 |
| その他の環境 | 坑内、事務室の空気環境、酸素欠乏危険場所 | 適用となる場所と省令上の条件 |
省令の細目と除外を確認する理由

施行令の各号には、厚生労働省令で定める細目や除外があります。たとえば有機溶剤に関する作業場は、労働安全衛生法施行令別表第6の2に係る業務のうち、有機溶剤中毒予防規則第28条第1項の適用を受ける業務かを確認します(労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号) 第21条第10号、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号) 第28条/確認日: 2026-09-05)。
そのため、物質名だけで測定義務の有無を決めたり、粉じんが発生するすべての屋内作業場を同じ扱いにしたりしません。工程の内容、作業場所、対象物質、既存の測定結果を記録として集め、適用される特別則と照らすことが基本です。
確認の順序を固定する目的は、該当しない作業場まで対象に含めることでも、必要な測定を省くことでもありません。まず現場の実態を整理し、根拠となる条文と照らすことで、外部に確認する論点を具体化できます。個別の該当判断は、所管窓口や専門家へ確認してください。
指定作業場との違い
指定作業場は、作業環境測定が必要な作業場の一部を、誰が測定を実施するかという観点で定めた区分です。対象作業場かどうかの確認と、指定作業場かどうかの確認を一つの判断に混ぜないことが重要です。
指定作業場の範囲

作業環境測定法施行令第1条第1項の指定作業場は、労働安全衛生法施行令第21条のうち、粉じん、特定化学物質・石綿等、鉛、有機溶剤の作業場と、放射線業務のうち厚生労働省令で定めるものです。騒音、暑熱、事務室の空気環境などは測定義務があり得ても、指定作業場ではないため、この実施者要件とは分けて確認します(作業環境測定法施行令(昭和50年政令第244号) 第1条第1項/現行(最終改正: 2026-06-17)/確認日: 2026-09-05)。
2026-10-01からは、労働安全衛生法第65条の3第1項から第3項により作業環境測定を行う作業場のうち、政令で定めるものが指定作業場に追加されます。個人ばく露測定がすべての作業場に新たに必要になるのではなく、改善が困難な第三管理区分、金属アーク溶接等作業、リスクアセスメントに当たって測定を行う場面などを、根拠に沿って個別に確認します(作業環境測定法施行令(昭和50年政令第244号) 第1条第2項、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行等について(基発0730第2号)/公布: 2026-07-29、施行: 2026-10-01、確認日: 2026-09-05)。
個人ばく露測定の目的と、個人サンプリング法との違いは、個人ばく露測定の基礎記事で確認できます。対象となる場面を確認した後に、指定作業場への追加と実施者要件を分けて見ることが、改正内容の読み違いを避ける入口です。
測定士または測定機関による実施

指定作業場で作業環境測定を行うとき、事業者は使用する作業環境測定士に実施させます。自社で実施できない場合は、作業環境測定機関に委託する規定であり、対象工程に対応する登録内容と測定範囲を確認して依頼します(作業環境測定法(昭和50年法律第28号) 第3条第1項・第2項/現行(最終改正: 2025-05-14)/確認日: 2026-09-05)。
作業環境測定士は第一種と第二種の区分があり、第一種は分析を含む業務を行えます。測定方法や対象作業場で必要となる区分は異なるため、資格名だけでなく、依頼する測定の種類、デザイン・サンプリング、分析の役割を確認します(作業環境測定法(昭和50年法律第28号) 第2条第5号〜第7号/2026-10-01施行時点版/確認日: 2026-09-05)。
依頼前には、登録証の有無だけを確認して終わらせず、測定対象の工程に対応する範囲を確認します。社内の担当者は、現場で使う物質、作業の時間帯、図面、前回の結果などを整理し、何を測るかと何を受け取るかを同じ確認表に載せると、役割分担を説明しやすくなります。
自社で確認する順序
作業環境測定の該当判断は、業種名だけで完結しません。工程と場所から始め、物質と既存の記録を確認したうえで、対象作業場、指定作業場、実施者の順に整理します。
工程・場所・物質・既存記録の確認

最初に、製造、取扱い、溶接、清掃などの工程を洗い出し、作業が行われる屋内外の場所を区分します。次に、使用する物質、粉じん、騒音、放射線などの因子と、直近の測定記録、評価、改善の経過をそろえます。この順序なら、施行令の号だけを見て対象外まで広げる誤りを避けやすくなります。
法定義務の違反を単純に即時の罰金として扱うことは適切ではありません。労働基準監督官の臨検監督などで違反が確認された場合は、是正勧告や指導が行われ、改善されない場合などに司法処分へ進む段階があります。労働安全衛生法第65条第1項は同法第119条第1号に列挙される一方、個別の事案は所管窓口や専門家へ確認します(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) 第65条第1項・第119条第1号/確認日: 2026-09-05)。
よくある質問
対象作業場と指定作業場を分けることで、測定義務と実施者の要件を整理しやすくなります。工程や物質の個別判断は、この記事だけで結論を出さず、根拠となる規定と所管窓口を確認してください。
屋内作業場ならすべて測定が必要ですか
対象は労働安全衛生法施行令第21条で定められる作業場で、各号には省令上の細目や除外があります。屋内であることだけでは決まらず、対象業務と特別則を確認します(労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) 第65条、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号) 第21条/確認日: 2026-09-05)。
指定作業場でない場合は測定士が不要ですか
指定作業場で作業環境測定を行う場合は、作業環境測定士に実施させるか、作業環境測定機関に委託する規定があります。指定作業場でない測定でも、別の法令上の測定義務や実施方法があり得るため、測定が不要と結論付けません(作業環境測定法(昭和50年法律第28号) 第3条、作業環境測定法施行令(昭和50年政令第244号) 第1条/確認日: 2026-09-05)。
2026年10月の変更はどこに関係しますか
対象となる個人ばく露測定を行う作業場のうち政令で定めるものが、指定作業場に追加されます。2026-10-01施行の制度は、限られた場面で行う測定の位置づけと実施者要件に関するものであり、対象外の場面まで同じ測定を課すものではありません(労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(令和8年厚生労働省令第116号)、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部の施行等について(基発0730第2号)/公布: 2026-07-29、施行: 2026-10-01、確認日: 2026-09-05)。
まとめ
作業環境測定は、労働安全衛生法施行令第21条で定める作業場について確認します。指定作業場では、測定士による実施または測定機関への委託という要件が加わります。工程、場所、物質、既存記録を整理し、対象の特別則と実施者の登録内容を確認してから次の対応を決めてください。
出典
- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第65条・第65条の3(laws.e-gov.go.jp)
- 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号)第21条(laws.e-gov.go.jp)
- 作業環境測定法(昭和50年法律第28号)第2条・第3条(laws.e-gov.go.jp)
- 作業環境測定法施行令(昭和50年政令第244号)第1条(laws.e-gov.go.jp)
- 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(令和8年厚生労働省令第116号)(mhlw.go.jp)
- 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行等について(基発0730第2号)(mhlw.go.jp)
著者・監修
依田尚人YDAIコンサルティング株式会社 代表
依田尚人は YDAIコンサルティング株式会社 代表。作業環境測定・特殊健診の義務の対象と方式別の費用実勢について、e-Gov・厚生労働省・都道府県労働局の登録簿等の公開情報を一次ソースまで確認する工程を標準として、本サイトの記事を設計・監修しています。
sagyo-kankyo-hikaku.comは、YDAIコンサルティング株式会社が運営する情報メディアです。掲載情報の収録基準・出典の考え方は情報の収録基準と運営方針をご覧ください。
掲載内容に誤りや古い情報を見つけられた場合は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。内容を確認のうえ対応します。


